不安、迷い、悩みから来る挫折の連続の毎日

木下明美

親しまれることで、看護の喜びを感じ始めた新人時代

私は子どもの頃、病院に通ったり入院したりといった経験をしました。そこで関わって頂いた看護師の皆さんの仕事ぶりが印象強かったのだと思います。将来は人の役に立つ仕事がしたいと思うようになり、母の勧めもあり看護師になる道を選びました。看護学校に進学しましたが、その勉強量や学びの幅の広さと深さについていけず、1年生の頃は試験が全然ダメでした。ただ、2年生の夏頃から猛勉強するようになり、勉強をするおもしろさがわかるようになりました。学んだことと患者の病態とが繋がり、“気づく、わかる、深まる”といった具合にどんどん楽しくなってきたのです。これがきっかけとなり、現在も継続して学びを楽しめるようになりました。それでも看護師になった頃は、挫折の連続でした。消化器外科病棟で勤務していたのですが、例えば、手術、抗がん剤治療、緩和ケアといった流れの中で患者さんを看ていく過程において、死について壁にぶつかり、患者さんと接する不安、迷い、悩みの連続でした。これでいいのか、本当に…。そんな日々を過ごしながらも、だんだんと看護師の仕事に喜びを感じるようになりっていきました。なぜなら、入退院を繰り返されていた患者さんが私に親しみをもって接して下さったからです。患者さんのために、ご家族のために何かしてあげたいと自分から前向きに思えるようになりました。

一人ひとりの患者さんにはそれぞれのドラマがあり、
ご家族と一緒にその方の生き方や亡くなり方を考えてケアしたい

ある患者さんとの出会いが、今の私の原点になっています。その患者さんはとても音楽が好きでした。私はピアノを弾くことができるのですが、その患者さんの二人の娘さんはバイオリン、ギターが弾けるのでセッションして演奏を聞かせてほしいとよく仰っていましたが、実際にはなかなか実現しませんでした。意識がなくなられた時に、私はご家族とセッションをしよう、そして聞かせてあげようということを提案しました。当時の看護部長や看護科長の協力を得て実現しました。そして、その演奏を録音し、病室で聞かせてあげました。意識がない中でも反応があったので私も家族の皆さんも嬉しくなりました。病院に来る患者さんは元気になりたくて病院に来られるけれども、その何割かはご期待に副えず病院で最期を迎えられます。それでも、一人ひとりにドラマがあり、生き方や亡くなり方は様々であると私は思いました。その人の生き方や亡くなり方を家族と共に一緒に考えケアできる、そういうことの素晴らしさを感じることができた経験でした。それ以来、私はご家族に嫌な思いをさせない、そんなケアを患者さんにしたい、常に新鮮な気持ちで看護をしたいと思っています。だから、患者さんが興味・関心があること、例えば音楽、絵画、歴史、料理、将棋などにもしっかり耳を傾けるようにしています。

自分の「看護の原点」をさらに発展させて、
将来は本格的に緩和ケアに取り組みたい

今後の自分のキャリア形成については、やはりこの原点をきっかけとしたケアを土台にし、さらに発展させていきたいと思います。院内の研究発表会や法人内学会で発表する機会を得ることが、勉強になり、自己の成長を感じているので、そういう機会に今後も積極的に参加していきたいと思います。いずれは、緩和ケアを本格的にやっていきたいと思っています。少し前に習得したのですが、患者さんの癒しに繋がると思い、アロマのマッサージの資格を取得しました。そういった資格や学びについてもよく検討し、看護の質を上げていきたいと思います。