教育専従科長の対談シリーズ・第3回

「科長の職場づくりへの想い」

5階西病棟科長 佐藤有紀
教育専従科長 飛田勇介

患者さんの視点での高い看護をするならば、「自分で考える」をメンバーに意識してもらいたい

-佐藤さんは、部署運営の中で大事にされていることはどんなことでしょうか

佐藤 メンバーには自分の仕事について、自分で考えるというスタンスを求めています。どうやりたいのか、なぜそうしたいのか、どうすればいいのか・・・意見を聞くようにしています。
飛田 それは、患者さんに対してどんなゴールを考え、また、そのゴールに達する上での軸を育てようという意図があるのですか。
佐藤 かなり前の話ですが、私が入職した組織では、今考えると看護というより業務をこなす方が仕事のシェアは高かったように思います。しかし、組織も時代も変化し、もっと患者さんの視点での看護をするとなると、やはり、看護師の問題意識、創造力、対人関係力といった自発性に起因する力が必要になってくると思っています。
飛田 患者さん視点に立ち、高い質をキープしながら、最短でゴールするという意味では、能動的に行動する看護師の育成が大事だということですね。新人看護師についてはどういう風に指導されているのですか。
佐藤 新人に同じことをすぐに要求するのは難しいです。それでも、経験をすれば、この症例はよかった、これはまずかったということは少しずつでもわかってくるので、何が良かったのか、何が良くなかったのかと振り返り、どうすればよかったのか、次はどうしたいかと新人のレベルに合わせて考えを聞くようにしています。
飛田 新人は先輩の背中を見て育つ、つまり模倣から始まると言いますが、佐藤科長とメンバーとのやり取りを見て、聞いて、新人も看護師としての軸が育っていくのだろうなと思います。

若手看護師も自分の考えを言え、行動も伴うようになり、ケアの質が向上してきた

-飛田科長、佐藤科長に何かお聞きしたいことはありますか。

飛田 そのようなマネジメントをされる中で、職場にどのような変化がありましたか。それをぜひ、聞いてみたいです。
佐藤 今の部署に異動して3年目ですが、その年に入職した3名の看護師の成長が職場に良い影響を与えていると思います。新卒者の2年目以降は完全ひとり立ちとしていまです。彼女らもご他聞に漏れずにそのようにやってきました。もちろんフォローはしますが、徐々に自分の考えを言えるようになり、内容がしっかりしてきていますし、それに伴う行動もできるようになり、ケアの質がどんどん良くなっています。
飛田 2年目以降は、仕事の自由性が高まり、自発性が生まれてくるのでしょうね。そうすると、若手看護師にも早い段階で指導を期待できるようになりますね。
佐藤 「看護単位が担う教育」という看護部が新たにスタートさせた院内教育を通じて、当部署主催の研修の講師を担当した3名の看護師が、集合研修後、研修効果を更に高めるために各部署に出向いて追研修をしています。そのおかげで、「相手にわかるか、伝わっているか」について、主催した側が研修評価をきちんとしなければ・・・という意識が向上したと思います。何よりも、3名が他部署で受けた評価は、そのまま自身の自部署での価値を再確認できる機会になっており、良い変化が生まれてきている実感はあります。
飛田 それも、佐藤科長が推進されている「自分で考える」というスタンスで仕事に取り組むという習慣がないと、そういう雰囲気にはなかなかならないと思います。自分で考えさせるというのは言うのは簡単ですが、管理者としては忍耐がすごく必要なことではないかと思うのですが・・・。
佐藤 私はせっかちなので、実は、すぐに結果を出したいんですね。だから、ついつい、相手に考えさせる前に指示してしまったり、自分で事に当たったりしてしまっていました。今でもその気持ちが強くなって即行動したくなるのが正直なところです。ですから本音は、メンバーとのやり取りの中では、「違う違う、そうじゃなくて私はこうしてほしいのよ!」と口に出しそうになることがありますが、何とか我慢して聞くようにしています(笑)。
飛田 「自分が変わる」ということを実践されているのですね。
佐藤 でも、メンバーの成長が何物にも代え難いくらいに嬉しいので、今は、もっともっとメンバーに考えや意見が言いやすいように工夫していきたいと思っています。

課題を素早く気づき、チームで看護の質を高めていく看護方式を活用して看護実践していきたい

-佐藤科長がこれからチャレンジしていきたいことはどんなことでしょうか

佐藤 職場の雰囲気は良い方向に変化はしてきていますが、課題がなくなったわけではありませんし、看護の質をさらに向上させていくことに終焉はありません。当院の入院病棟の多くはきちんとした看護方式ということを意識せずに部署運営がされてきました。ここ数年で患者管理の上でも職員教育の上でも組織に合った看護方式を活用することの重要性を意識するようになりました。当面の目標は、急性期医療を担うには非常に厳しい人員体制の当院で一定の成果をあげるには、色々研修会に参加して固定チームナーシングが良いと思っています。それを実践し、バラつきのある看護師個々の資質をチーム力でカバーし、チームで看護の質を高めていく仕組みを作っていきたいと考えています。
飛田 なるほど。確かに個人の能力の相乗効果が組織の能力ですし、そういう意味では、管理者やリーダーが自分たちで適切なゴール設定ができるようになることが大事ですね。
佐藤 個人が個人として自分を捉えるのではなく、チームの一員として、目標を共有し、役割を認識した上で自律的に仕事をしていくことは、看護の質に影響してくると思います。
飛田 仮に、目標を達成できなくても、チームで目標に向かって1年間やり遂げたという経験は、私たちの病院の看護を高めていく上で、みんなで患者さんのことを考える、チームワークで仕事に取り組んでいく、ということの大切さを学ぶ最高の人材育成の機会ではないかと私はいつも思っています。
佐藤 そうですね、それは、私もそう思っています。そういう中で、メンバーが自分の意見や考えを気兼ねなく言えるようになることも情報共有の大切な要素だと思っています。自分で考えるというスタンスを育むとともに、自分の考えや意見を気兼ねなく言い合える風土づくりをしていきたいと思います。
飛田 及ばずながらですが、職場づくりの一助となれる教育について、私ももっと勉強していきたいと思います。
佐藤 頼りになります。よろしくお願いします。

※聞き手 石田秀朗(人事コンサルタント)